ペンギンプルペイルパイルズ「道子の調査」

highreso2006-09-09

9/3の公演を鑑賞。失踪した女を探す調査員・道子がかつて女と関わりのあった人間を呼び出し、一癖ある連中を相手に話を聞いていく。どこか西澤保彦を髣髴とさせる会話中心のミステリータッチで話は進み、六年前の出来事の回想と平行して舞台は進行していく。つかみ所のあるようなないような台詞から引き出される『失踪した女』代沢波子の姿が、矛盾する証言の中から徐々に形作られ、その正体が観客にもうっすらと分かりかけてくる頃には話はもう佳境というかなり緻密に編まれた構成に脱帽。終演後におもわず今回公演の台本を購入してしまいました。

役者さんはみなさん見ごたえある演技を存分に発揮し、出演者による演技合戦の様相を呈してきたりしてそっちの意味でも面白い。ぱっと見ジャニーズな吉川純広さんがしっかり小劇場の舞台役者していて興味を引かれるし、内田慈さんは相変わらずかわいいし、加藤啓さんは謎めいていて(ぶっちゃけ「密室彼女」とかぶっている)カッチョ良い。ところで拙者ムニエルの役者は客演のほうが映えるというのは本当?

代沢波子、砂恵の上司、道子の夫に密告する女と舞台上に姿を現さない人間は3名いて、あきらかに「登場する人たちにとっての都合のよさ」を象徴しているように思える。あとそもそも代沢波子の行方調査を依頼したのは誰なのか?ていうかラストシーンわけわからんとかとか謎は色々あって、あと一歩でわかるような気がするんだけどという気持ちを抱きながら家へと帰ることの出来るかなりお得なお芝居でしたよ。

ペンギンプルペイルパイルズ
2006年8月23日〜9月3日 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:倉持裕
出演:小林高鹿 ぼくもとさきこ 玉置孝匡 内田慈 近藤智行 吉川純広 松竹生 山本大介 伊藤留奈 加藤啓(拙者ムニエル

メモ

9/10 NHK-BS2「深夜劇場へようこそ」(0時55分から)にて、本谷有希子腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
9/10〜13 野鳩「アイム・ノット・イン・ラブ」イープラス先行
9/17 「深夜劇場へようこそ」にて、宮沢章夫「モーターサイクル・ドンキホーテ
9/27 五反田団「さようなら僕の小さな名声」チケット発売

タイガーフェイクファ「山羊王のテーマ」

「八木メェーメェー」という浦賀先生リスペクトソングではもちろんなく、みんな大好き川本真琴お姉さんが「今年の始めに小さなライブハウスで自作自演ミュージカルをし」た「時に作った曲」を3曲(とカラオケ)まとめたもの。ライブ音源だし演奏も結構チープ、というか全体的になんていうのかな、マンガっぽい(ちなみに3曲目の「成城学園前の歌」は吉田戦車が作詞)。アニソンぽいというわけではなくて、ピアノやドラムの軽快な感じがやたらコミカルに聴こえてくる。
やっぱ川本真琴の声はかわいいなー。すごく楽しそうに歌っているし不覚にもちょっと微笑ましく思えてしまう。朝から晩まであの娘にバレずに何度も何度も飽きるまでキスしようよと歌っていた川本真琴とはちょっと違う正統派なキュートさが溢れていて辛抱たまらん。そのミュージカルのこと全然知らないから歌詞の意味がまったく分からないのだけど。

少年社中「光の帝国」

光の帝国社中の第16回公演をこないだの「アルカディア」のときに買ったDVDで鑑賞。DVDというかぶっちゃけDVD-Rです。ラベルのとこ白いまんま(役者か毛利さんがサインとかメッセージ書いてくれてもいいんでねーの)。特典映像一切なし。ヨーロッパ企画をちょっとは見習ってください!ちなみに3000円というボッタクリ価格で購入した僕をあざ笑うかのように、9月からwowwowブロードバンドでも放映されるみたいです。本当に面白い舞台なので、よかったらぜひ。
実際劇場に足を運んだときにはもう夢中になって観てたのでストーリー展開は適当に流してたりしてたのだけど、見返すとやっぱりぐちゃぐちゃというかいきなり四ヵ月後になってパピコ妊娠とかなんだそりゃオイってなもんで、大人の現実を突きつけられる唐突さだけがリアルなのでこのシーンはすごい浮いていると思いました。役者さんだとスネーキングの人が滑舌悪すぎで笑える、とか田辺さんの声届いてないーとか、観客席の俺たち映ってるーとかまあひどい言葉は次々と浮かんでくるのですが、劇場で観たときは微妙だった「ハレルヤ」@中村一義が流れる決めのシーンとか音楽ギュンギュンでグッと来るし、最後の「探してみな!」からクライドがクラウドで飛び立ってみんなやってくるシーンなんてもう号泣です(このシーンの曲「アルカディア」でも開演前に流れていて、その時点で泣きそうになっていた)。この公演は本当胸に残ってるんで、買ってよかったと思いました。いや本当ですって。

森見登美彦「太陽の塔」

高校2年生の頃この本を読んで30ページくらいで挫折したあの頃の僕の気持ちなんて君にわかるわけがないんだが、だからこそ今、声を大にして伝えたい。好きです。
とはいえここに描かれている世界をいとおしく思えるわけでも、頭がいいくせに肝心なとこを見ないで生きている主人公に感情移入できるわけでもないので、本当は好きじゃないのかもしれない。それでも「こういう気持ち」を言葉に変換して物語を形作ることの出来る人が現代のこの世に存在するのだという事実には、産道を通り抜けて誕生する直前に母親の胎内を振り返るような懐かしさと安心感を覚える。たとえそれが男だとしても。

海羽超史郎「ラスト・ビジョン」

このエンディングへと着地した原理は正直言ってよくわからないけど、これは凄い傑作なのだが凄い失敗作でもあるような気がする、と読み終わった瞬間の僕が言った。

だいたいライトノベル読者の3割は登場人物の台詞(会話文)しか読んでいないので、こんな理屈くさい小説は訳わからんちんに決まっとる、と思いながら読んでたら、一応小説を構成するすべての文章を読んでいる僕でも全然わかんなかった。電撃文庫なのでギャルゲーっぽいキャラクターでそれっぽさを演出してるけれど作者の意図するエンターテイメントの方向性が微妙にずれている。それでも「なんか凄いような気がする」という気持ちを読者に抱かせたかったのならば、見事にしてやられたというのが正直な感想です。