川崎康宏「Ａｌｉｃｅ」

コミケ会場でサイン本が買える不思議作家、川崎康宏が電撃文庫に初登場。「不思議の国のアリス」のオマージュであると深読みすれば思えなくもないアクション満載、火薬つかいまくりのノンストップムービーじゃなかったノベル。クマもあるよ。

でも正直言ってクマはどうでもいい。それほどまでに主人公のアリスが僕にとってツボ。ちょっと強すぎるところがいい。「軽い日焼けでも体に悪影響」という設定なのにやたらと露出度が高いのもいい。優等生の男の子相手に恥じらいを見せちゃうところもいい。この娘には泣いてほしいなあと思いながら読んでいたが、作品世界を壊しかねないと気づかされあきらめた。作者の想定外の位置にこんな読者が出来上がっている。

それにしてもエナミカツミのイラストはすごい。あまりライトノベルっぽくない内容と文章（でもこういうレーベルでないと出せないよなあ）で構成される作品をきちんとライトノベルたらしめているのは、この挿絵の力によるところが大きいと思う。成田良悟の作品もそういうところあるんじゃないかな。