中村九郎「ロクメンダイス、」

「恋してる」と心の中で思ったならッ!その時スデに行動は終わっているんだッ!!

***

作者と、読者である僕の間で話が通じてないという怖さ。あまり健康でない主人公の一人称文体からくる不安定感をベースに吊り橋効果なのかなんなのか、言ってることがコロコロ変わる得体の知れない登場人物たちがいつの間にか目の前に迫ってくるこの感覚は未体験のものでやはり興奮する。主人公の男にまったく感情移入できないという点で「ROOM NO.1301」とか「ゆびさきミルクティー」と少しばかり似てるかもしれない。

最大の欠点はいつの間にか盛り上がっていていつの間にか終わってしまうので、読者としてはあまり面白くないこと。幻想的でSFチックな作品でありながら映像的なイメージも容易な描写を用い、なおかつ暴走気味にエゴイスティックに披露することが出来るというのはやはり才能だと思うけれども、そういったパワーは一歩間違えると山田悠介と変わらなくなってしまうのでこれからの作品がどうなるのか不安と期待が半々だったり。「黒白キューピッド」は読みます。