真嶋磨言「憂鬱アンドロイド」

自分のことをアンドロイドだと思い込んでいる勝手に改造な男の子と、そんな彼を一身上の都合によりほっとくことが出来ない幼馴染的存在の女の子。ライトノベルってこんなにライトだったっけ?と、すいすい読み進めることが出来ると同時に、引っかかる箇所がないことに物足りなさも感じてしまう今日この頃。

少年と少女ふたりの物語が彼らをとりまく人間たちの視点から、さらになんらかのフィルターを通した上で語られる。それは恋愛感情からくる嫉妬であったり、ふたりの関係性への憧憬であったり、少年の存在そのものに対する疑惑であったりと否定的なものばかりなのだけど、距離が近づきふたりと接し、影響を受けることによって変質していく。その連続で物語が彩られていき、周囲の人間は徐々に変わっていくが、ふたりの関係性だけが変わらない。肝心な部分だけが動いてくれないもどかしさの表現が上手い。

自らの意識の底へと昇華できないモヤモヤした感情を「憂鬱」という言葉でひとくくりにしてしまう乱暴さがちょっと気に入らないのだけれど、読み進めていくうちに分かってくる関係性の逆転が面白い。基本的に性善説の「かわいい」話。自分より不幸な人間を探すことに疲れた人、やさしく生きていきたい人向け。