森見登美彦「太陽の塔」

高校2年生の頃この本を読んで30ページくらいで挫折したあの頃の僕の気持ちなんて君にわかるわけがないんだが、だからこそ今、声を大にして伝えたい。好きです。
とはいえここに描かれている世界をいとおしく思えるわけでも、頭がいいくせに肝心なとこを見ないで生きている主人公に感情移入できるわけでもないので、本当は好きじゃないのかもしれない。それでも「こういう気持ち」を言葉に変換して物語を形作ることの出来る人が現代のこの世に存在するのだという事実には、産道を通り抜けて誕生する直前に母親の胎内を振り返るような懐かしさと安心感を覚える。たとえそれが男だとしても。