ダイタンプラネッツ第1回公演「恋するクランケにキスと包帯を!!」

ダイタンプラネッツ
2006年7月20日〜24日 下北沢駅前劇場
演出:伊藤ひろあき
脚本:上田誠ヨーロッパ企画
出演:原田泰造 大北隼也 千代田信一(拙者ムニエル) 諏訪雅(ヨーロッパ企画) 永野宗典ヨーロッパ企画) 植木夏十NYLON100℃) 神農幸 橘田あかり 松浪りさ 二本柳知子
21日公演を鑑賞。同じ病室で療養中の入院患者たちが織り成す、文句なしに王道のドタバタコメディ。笑いあり、変な毒要素は無し、涙は期待しないほうがよし。舞台上での演技が中断されて、あらかじめ撮影してあるVTRを使って話が進んだりと、序盤からオイオイ大丈夫かよな演出もあったけれど、原田泰造演ずる後藤が他の患者相手に合コン必勝法をレクチャーするあたりになって俄然盛り上がった。役柄からしてテレビで見る泰造のキャラそのまんまだったので小劇場っぽい笑いではなかったけど、こういうテレビバラエティっぽい演出も新鮮で楽しい。

惜しむらくは劇団全体の一体感みたいなものが感じられなかったこと。各々の演技は光っているのにちょくちょく台詞の間をはずすのが結構気になった。あと可愛らしい女優さんを揃えているのにみんなお飾り的な存在で、本編ではほとんど出番がないのも肩透かし。とはいえ、2800円で原田泰造をあんな間近に見られたのはすごく得した気分だと、普通にミーハーな僕がいたりするわけですよ。今回は泰造と親交があったらしいヨーロッパ企画が協力してくれたみたいだけど、次回公演があればどんなことになるのかすごく楽しみだったりする。

法月綸太郎「怪盗グリフィン、絶体絶命」

本秀康のイラストがすごく卑猥に見えてしまう僕でも読んでいいですか?な、まごうかたなきスーパージュブナイル。萌えとか意地悪とか一切なしの直球勝負。難しい漢字も多いけど、ふりがなが振ってあるのでちゃんと辞書を引こう。

怪盗グリフィンが特にお友達を持たず、お仕事を全部ひとりでやっちゃう中田ヒデ的なスタイルは「みんな仲良くしましょう」と教育されている子供たちにはなかなか新鮮なのではないのかな。スパイ七つ道具みたいなアイテムに頼らず、己の頭脳だけで絶体絶命のピンチを乗り越えていくグリフィンの姿を見せられたらもうニートなんてやってる場合じゃない。さりげなさ過ぎるあとがきも最高にクールだぜ。

ポツドールvol.14.5「女のみち」

ポツドール
2006年7/5(水)〜10(月) 新宿THEATER/TOPS
脚本・演出 溝口真希子
出演 安藤玉恵 岩本えり 内田慈 玄覺悠子 佐山和泉(東京死錠)/米村亮太朗 鷲尾英彰 富田恭史(jorro)
9日の日曜日昼公演を鑑賞。ポツドールは前回公演に次いで2回目。今回はAVの撮影現場が舞台なんだけど、笑わせるための演出が入っていたりと、雰囲気が妙にうそ臭くてリアリティがない(あれ、今回演出やってる溝口さんってAV業界の人だよね?)。そのぶん、この劇団特有の売り(らしい)「覗き見してる感じ」はあんまり感じられなくて何気に健康的。

内容は本当に普通。女の子だけの芝居なので、悪口とか男自慢とかそういったことを一人一人がベラベラ喋ることで彼女たちの性格を観客に教えてくれる親切設計。それだけで話が進んでいくので構えず観られる。ドラマティックじゃないけどドラマしてるので、アダルトなシーンに抵抗がなければ演劇初心者でも楽しめる感じ。

ほとんど出番のない男優陣はさておいて、女優はもう全員上手い。特にロリ系新人女優カスミを演じた内田慈さん。この人どんだけ引き出しあるんだ、と突っ込まずにはいられないキャラクターの作りこみっぷり。「フェラチオってなんですか?」から始まる一連のシーンでは憎らしいほどちっちゃいモニターに釘付け。ちゃんと脱げ。シベ少14回公演「スラムダンク」で魅せた演じ分けにも脱帽したし、もうすっかりファンです。とりあえずは内田滋と間違えないようにしないと。

シベリア少女鉄道vol.16 「残酷な神が支配する」

シベリア少女鉄道
2006年7月6日(木)〜15日(土) 吉祥寺シアター
作・演出:土屋亮一
出演:前畑陽平 藤原幹雄 横溝茂雄 吉田友則 篠塚茜 出来恵美 加藤雅人(ラブリーヨーヨー)
七夕の日に観劇。シベ少の芝居を観るのも三回目。コンスタントに公演を続けてくれてうれしい限り。

初日でもないのに役者さんたち台詞を噛みまくリスティ。前半パートはいちおう倒叙モノの誘拐サスペンスの形は成しているものの、比較的おとなしめにストーリーが進む。妙にシリアスなので笑いどころも特になく、これがつらい。暗転が多くて退屈(実はこれも伏線だったりするのだけれど)。シベ少の役者は基本的にへたくそなので、「普通の芝居」をみせられても眠くなる。実際、一緒に観にいった某よあけさんはシベ少芝居の構成を知っているせいか、前半は普通に寝てました。

それを乗り越えた後にはお楽しみのどんでん返しが起こるわけなんですが・・・今回の落ちは・・・ええと・・・ネタバレはしませんけども・・・するのもアホらしいというか・・・いやもう本当に限りなく脱力。これを大阪でもやるわけ?と人事ながら心配せずにはいられない下らなさ。本当に大丈夫?石投げられない?mixiで検索してみたけれど、みんな超褒めててびっくりんこ。いや僕も大笑いしましたけど。

今回もやっぱり体力勝負だったんだけど、それだけじゃなくて前畑さんとか客演の人とか、もっと役者に演技を求めてもいいと思うんだけどなあ。そして相変わらずカーテンコールはなし。次回は来年の春?結構間空きますが忘れないようにしましょう。新人の女優さんも入ってくる(たぶん)ことだし。

ロリータ男爵11周年アニバーサリー本公演「エプロンの証」

ロリータ男爵
2006年5月24日(水)〜29日(月) 下北沢駅前劇場
作・演出 田辺茂範
出演 大佐藤崇 斉藤マリ 役者松尾マリヲ 加瀬澤拓未 丹野晶子 草野イニ 斉藤麻耶 田辺茂範 足立雲平 立本恭子 吉原朱美(ベターポーヅ) 今林久弥(双数姉妹
26日夜公演に行ってきた。子供の落書きにしか見えないイラストを使った映像、ポロポロ部品がとれるセット、ひたすら歌いわめきたてる役者陣、チープすぎるパロディ、執拗な観客いじりと、やってることはホント幼稚。なのにいつのまにやら世界に引きこまれてしまい、終始笑いっぱなしの自分に驚いてみたり。上演前に役者松尾マリヲさんが「ロリータ男爵名場面集ベスト10」なる企画をやっていたのだが、これが押しまくって開演が30分くらい遅れる。観客が引きまくってるのに延々続ける姿に業のようなものを感じた。途中で丹野晶子さんもちょっとだけ登場。ってか、これも本編のうち?

会場は満員。自由席でザブトンだったので尻が痛い。意外と女性客多目。さんざん巾着投げつけられてたけど大丈夫だったの?ぶっちゃけ勢いに飲まれてしまったので面白いのか面白くないのかよくわからなかったりするのだけど、笑いとか涙とかそういう次元とは別のところに着地した、めちゃくちゃにも程があるラストには感動するしかない。

芝居を観てこんなに疲れるとは思わなかった。万人にお勧めできる劇団ではないかもだけど、好きな人は本当にはまっちゃうんじゃないかと思います。「エンタの神様」には飽きちゃった人にお勧め。

北京蝶々第6回公演「コトバのサクラ」

北京蝶々
2006年5月17日(水)〜22日(月) 早稲田劇研アトリエ
作・演出:大塩哲史
出演:赤津光生・帯金ゆかり・鈴木麻美・三浦英幸・森田祐吏・垣内勇輝・太田美登里・岡安慶子・鈴木淳子・田渕彰展・長岡初奈・満間昴平
18日の公演を鑑賞。早稲田の新入生らしき学生(女の子多め)が目立ち、木曜夜にもかかわらず満員御礼でびっくり。暗がりの中うっすらと見える近未来っぽい舞台セットも格好いい。

コミュニケーションロボットシステム 「サクラ」、すなわち人間そっくりのロボットを通して相手とコミュニケーションをとるシステムが存在する世界。「フォーラム」と呼ばれる場所に集った人々は、相手がどんな人間なのかわからないまま、会話やふれあいを楽しんでいたが、そこに家出した妻を捜している男がやってきて・・・。

ユーザーとロボットを演じる二人がいて、ユーザーの動きサクラが同時にトレースしなきゃいけないので大変(舞台の構成上、お互いの動きはほとんど見えない。)。ちょっとでも動きをミスると観客が醒めてしまうような厳しい演出であり、ちょっとストイックにすぎるような気がする。観ていて窮屈だったと言えなくもない。オカマ喋りをしていたサクラ役の人は上手かった。

素敵だったのは駄目エンジニア、タナカを演じる帯金ゆかりさん。ただの白痴キャラかと思いきや、裏側が明かされてきてだんだんと狂気が見え隠れしてくる様にはゾクゾクする。こないだ観にいった少年社中にも客演されていた鈴木麻美さんは日々の生活に疲れてますな女性を演じていて、これがまたハマり役。最後の暴走シーンはかなり引き込まれた。何らかの教訓を残して終わるのかと思いきや意外にブラックだったラストにはびっくり。

早稲田劇研において現在唯一の劇団であるだけあって、かなり「しっかりしている」芝居をみせてくれました。手塚治虫のSF作品を髣髴とする、ベタだけどやっぱいいよねな話の作り方も好み。次回公演も行きますよ。

劇団、本谷有希子(アウェー)「密室彼女」

劇団、本谷有希子
2006.5.3.〜5.9. 下北沢ザ・スズナリ
企画:乙一×本谷有希子 
出演:加藤啓(拙者ムニエル吉本菜穂子 杉山彦々
結局どこらへんが密室だったのかというとそれは貴女の心です、といった感じの、鳥肌が立つくらいベタベタなレンアイ劇。そこに設定の不気味さと細切れにされて順番に提示される真実が加わって、観ている人間をたまらなく不安にさせます。なにが起こっているのかだんだんわかっていくという過程がなにより怖い。

怖いんだけどのめりこめない。吉本菜穂子さん演じるヒロインが周囲の人間との相互不理解を語って「何も言いたいことが無いんだったら黙っていればいいのに」みたいな台詞を口にしていて、背中の辺りが痒くなりました。この台詞が劇中から乙一っぽさを払拭して本谷有希子にしている、んじゃないでしょうか。こういう生臭くて安っぽい台詞は乙一作品には似合わない、とかそういうことよりも、こういう若さ炸裂な独白のシーンは個人的に聞いていて恥ずかしい。担当していたオールナイトニッポンもなにひとつ好きになれなかったし、本谷有希子とは根本的に相性が悪いのかもしれません。

ところで僕が見に行った9日の夜公演には乙一が来てました。劇場を出たすぐのところで関係者らしき女性としゃべっていましたが、あれが本谷有希子なのかどうかはよくわからなかったので無視して真っ直ぐ帰りました。おなかすいてたしね。