少年社中第17回公演「アルカディア」

highreso2006-08-20

20日の千秋楽を鑑賞。前回公演ですっかりファンになった小松愛さんが今回急遽降板ということでテンション下がるも、公演自体の評判はものすごく良いので張り切って観にいく。一緒に行く4人分のチケットを僕が取ったのですが、期せずして良い席を確保できたため、何だか褒められてしまいました。

音楽も衣装も小道具もすごい劇団だけど、僕が少年社中を観るうえでどこを楽しむのかっていうと役者たちが体中からダラダラ流す汗なんですよね。照りつけるライトと激しいアクションで汗だくになりながら演技を続ける彼らに、公園を一生懸命に走り回って遊んでいる子どもたち、みたいなイメージが重なるんですよ。前回の圧倒的なスピード感と比べるとテンポがしっくりきておらず、三部作の最後ということもあってか説明台詞が多くて(聞いても頭に入ってこない)ダレる部分もあったけれど、それでも勢いは存分にあって引き込まれた。

キャラクターではシーラカンス博士(宮本行さん)がお気に入り。グリフォン役の長谷川太郎さんがあんな可愛い顔をしているのを初めて知った。元劇団四季の宇都宮直高さんを主役に据えてしかも歌を露骨にストーリーに絡めてくるのはちょい微妙に感じたけれど、ほぼ登場人物全員にちゃんと見せ場があったのはよかった。今回のクチイヌ(井俣太良さん)はすごく暑そう。ヒロイン、パナップ(芳賀淳子さん)は、可愛いんだけど正統派というか、良い子すぎて夢中になるには何かが足りない。タイホン役の加藤敦さんはギャグっぽいところもちゃんとはまっていてカッコ面白かった。パピコ(園山琴絵さん)の出番がひとりだけ妙に少なかったのは、やっぱり少し本を書き換えたのだろうか。

少年社中
2006年8月15日〜20日 シアタートラム
作・演出:毛利亘宏
出演:井俣太良 大竹えり 岩田有民 堀池直毅 森大 廿浦裕介 加藤良子 長谷川太郎 杉山未央 山川ありそ/宇都宮直高 松下好(エルカンパニー) 宮本行(ブルージェイイースト) 土屋雄(innerchid) 鈴鹿貴規(Team AZURA) 加藤敦(ホチキス) 芳賀淳子(Ele-C@) 園山琴絵(SUPER★GRAPPLER)/末冨綾

鉄割アルバトロスケット「高みからボラをのぞいてる」

鉄割アルバトロスケット
2006年8月17日〜20日 こまばアゴラ劇場
劇作:戌井昭人 
演出:牛嶋美彩緒
出演:内倉憲二、奥村勲、中島朋人、中島教知、田山雅楽子(kiiiiiii)、大根田雄一、木村秀治郎、小林滋央、南辻史人、伊藤麻実子、古澤裕介(ゴキブリコンビナート)、東洋テスタッチ、霜村電発(ともに東洋組)他
ユリイカ」の小劇場特集で柴田元幸先生もなぜか褒めていた鉄割アルバトロスケットを初めて観る。19日昼の回。全席自由なので調子こいて一番前のど真ん中に座ったらえらいことになった。

たぶん主演、だと思う内倉憲二さんとゴキブリコンビナートの古澤さんはまったく違うタイプのキャラながら迫力満点。古澤さんが切れて女の顔に見立てたキャベツを殴り続けるシーンはかなり胸に来るものがあった。内倉さんは普通に格好良い人なのに普通に格好良い役どころでなんだかずるい。

大体五分ぐらいの短い話を繋げてひとつの話を作ったり作らなかったり。それが一時間半延々続く。コントだか芝居だかパフォーマンスだか言葉で説明しづらいのだけど、とにかくなんでも詰め込んで文句を言われないようにしている。不条理と言っていいと思うし、物は飛んでくるしでやってることはいわゆるアングラ演劇っぽいけど気持ち悪いものがほとんど出て来なかった(鳩を殺すシーンで本物の鳩の死体出てくるかと思ったけど違ったし)ので、そこらへんこだわりがあるっぽい。

そういえば公演告知には「なにかが飛んでくるかもしれませんが云々」と書いてあって、なにが飛んでくるのか楽しみにしていたのだけれど、では結局なにが飛んできたのかといえば武器として使われていたネギだった。あとキャベツと沢庵。

この「ネギで殴りあう」というのがこの劇団の持ちネタのひとつらしいのだけど、僕はそれを役者たちが1本づつネギをもってチャンバラをやる的な光景を想像していたらこれが大間違い。10本くらいを束にして乱闘に突入し、10人くらいが文字通りバカスカ殴りあう。容赦なく客席に飛ぶネギの破片。一番前はヤバイ。結果として劇場中がネギくさくなり、終演後はそそくさと退散しました。野菜が値上がりしている中よくやるなあ、としみじみ思う僕でしたとさ。

親族代表「小(りっしんべん)」

親族代表
2006年8月8日〜13日 新宿THEATER/TOPS
脚本・演出:福原充則(ピチチ5)
脚本提供:小林賢太郎ラーメンズ) 千葉雅子(猫のホテル) ブルースカイ 本田誠人(ペテカン)
出演:嶋村太一 竹井亮介 野間口徹
13日昼の千秋楽を鑑賞。「GOLDEN BALLS LIVE」でラーメンズと共演して以来一躍有名になったりならなかったりしている野間口徹の所属する劇団というかコントユニット『親族代表』の本公演。その縁か今回のオムニバス形式でのコント脚本提供者の中にラーメンズ小林の名前が。そのほかの人も普通に豪華。

喪服を着ていくと500円割引ということで、僕なんか暑い中張り切って着ていったのに喪服姿の男の人があんまりいなくてちょっと寂しかったり。女の人は結構着ていた。というか女性客が本当に多かった。こんな地味な顔の男たちの一体どこに夢中になれるんだと憤っていたら結構面白かったです。前半は苦笑いも混じってたけど後半は結構本気で笑った。以下それぞれの感想。()内は脚本を書いた人。公演終わったのでネタバレしまくりで書きますが、カーテンコールで竹井さんが「今回の公演はDVDになる」といっていたので、それで楽しみたい方は読まないほうがいいかも。

1.「影響を受けた人とその友人とその友人」(小林賢太郎)…男3人がファミレスで語り合う。ツッコミ役(竹井)が別に常識人なわけではなく、影響を与える友人(嶋村)に振り回され続けている、という面白さがいまいち伝わってこず。竹井が野間口相手にひとつのネタで天丼しまくるのだけど、役者(のキャラ)にはまりきれている訳でもない僕には鬱陶しくてしょうがない。どうでもいいけど、こう並べるとこのタイトルだけずいぶん浮いているように思う。

2.「男心」(本田誠人)…合コン経験ゼロの男たちが合コンの大海原へと繰り出すぜ、という話。最初は男だけで団結しておきながら、ちょっと受けると個人プレーに走る男たち、という面白さをすごくまっとうに描く。野間口ファンは不自然なほど手品に感心してたけど、そんなにすごかったか?

3.「情熱な男たち」(嶋村太一)…竹井亮介葉加瀬太郎の格好でエアバイオリンをするというコント。それだけ。場繋ぎ感はありありだけど、ファンなら笑えるかも。それにしてもこれ見て以来、情熱大陸のテーマが頭から離れない。次のコントとの間に『暫くお待ちください』が入ったけど、あの時間だったら映像ネタをひとつ入れられたと思うので、なかったのは残念。

4.「泥人間」(千葉雅子)…うらぶれた中華屋を舞台にした異色作。千葉雅子ワールドで居心地悪そうに泥臭い労働者を演じている3人に笑い泣き。オチてるのかオチてないのかすら微妙なラストもプロレタリアートである(よくわからん)。

5.「チキンブルース」(嶋村太一)…歌のコーナー。というか、「泥人間」から続けてこれだったので、これも含めてひとつのコントなのだと思っていた。

6.「天文クラブ」(福原充則)…今回のベスト。何かがひとつひとつズレていって壮大な狂気を生み出すという構成には脱帽。張り切った演技よりもどこか胡散臭い3人のほうがしっくりきている。中学の天文部が舞台で、文化祭の準備をする話なのだけど、コント中「天文部の展示なんて誰も見に来ない」という台詞が多々あり、切なくなった。

7.「野間口徹と…」(ブルースカイ)…今回の裏ベスト。ドラマや映画やCMに出てどんどん有名になっていく野間口(誇張あるけど大体本当)が親族代表を『野間口徹と親族代表』にしてくれ、とか言い出す話。あんま面白くなかった小林脚本をこのコントの伏線に使うという大胆さには天晴れ。喪服着てきてよかった。

男子はだまってなさいよ!5「宇宙戦争」

男子はだまってなさいよ!
2006年8月9日〜13日 下北沢本多劇場
作・演出:細川徹
出演:斉木しげる、大堀こういち、五月女ケイ子近藤公園荒川良々池津祥子佐伯新、深田純、細川徹/日替わりゲスト
11日昼公演を鑑賞。イープラスの先行予約に当たったおかげで前から2番目というナイスな席で観ることが出来た。実物は結構ガタイがよくて大迫力だった斉木しげるや、ブリーフ一枚で踊り狂う荒川良々をこんな眼前で拝めたのはなんというか、幸せ。

笑った。死ぬほど笑った。前回公演をDVDで観たときは全然面白くないと思っていたけれども、生で観るとやっぱり違う。直に触れないとこのバカさにはついていけない。大堀こういちさんもちゃんと面白い。男性陣はすぐ脱ぎだしてブリーフ一丁になる。その反面、女優二人(五月女ケイ子池津祥子)は衣装の変化が多く、特に五月女さんは小学生女子(しかも喋れない人という設定)の格好をさせられたりして、別に美人でもないのになぜかもえ。

とにかくコントの展開に一貫性がなく息もつかせぬほど矢継ぎ早に繰り出されるバカさに失神寸前。メインとなるのは荒川扮する番長と池津扮するゾンゲリアンの戦い。そして最後に生まれる愛。なんだかんだでハッピーに収束してしまうあたりが細川徹さすが。でも本人出演はいらないよ。台詞聞こえてこなかったし。

日替わりゲストはバナナマンのふたり。ファンではないけど超好き(微妙な表現)なので、出てきた瞬間思わず「うおー」と口に出してしまう。これまたパンツ一枚の姿で、荒川くんも交えて竹刀ゲームをやってくれた。うれしくて泣きそうになる。日村、荒川ともに腹に当たって痛さ倍増。でもまあ本筋とは関係なくゲストコーナーみたいになっていたので、別にバナナマン好きじゃない人にはどうでもよかったのかもしれない。どうでもよかったといえば芝居の途中、唐突にDJ(本職の人)が現れてスーパープレイを見せてくれるのだけれど、ギュンギュンピコピコ大音量でうるさいしこれは本当にどうでもよかった。

猫のホテル「電界」

猫のホテル
2006年8月2日〜6日 下北沢本多劇場
作・演出:千葉雅子
出演:中村まこと、森田ガンツ市川しんぺー、佐藤真弓、池田鉄洋、村上航、いけだしん、岩本靖輝、菅原永二千葉雅子松重豊
4日昼公演を鑑賞。有名どころの劇団だけど、なにぶん観劇初心者の僕ですのでやっぱり観るのは初めて。んでもって16年やってる猫のホテル本多劇場での公演も初なら、僕が本多で芝居を観るのも初めてだったりして。

やっべー超硬派な芝居だ。舞台は浦安のさびれた漁村。土地を埋め立てるため漁師たちに漁業権放棄を交渉しに来た男。ところがそこでは漁協同士の対立があって・・・。ってこんな筋からして既に文学っぽい雰囲気を醸し出していて、正直ちょっと眠い。ところどころギャグも入るけどさほど大笑いというわけでもなく、ドタバタやるシーンもただ走り回ってるだけでいまいち緊張感が・・・。なんかカタルシスが発生したっぽいラストも、訳がわかるようなわからないような。初めて観る劇団なので楽しみ方がわからなかったというのもあるけど、どうにものめり込んでは観ることは出来なかったのでした。

役者陣はもう顔立ちからして狂気に満ち溢れていてゾクゾクする。台詞の一言一言が観客の耳から入り込んで肺腑をえぐられる感じ。そして噂には聞いていたけれど池田鉄洋さんは凄い。初めて観る人にもわかりやすくとっつきやすい演技をしながらも、かなり深いところまで突っ込んで演じきっている。普通にファンになりました。テレビのほうも観てみるかな。物販のとこでイケテツTシャツ買おうかと思ったけどデザインが微妙に好みではなかったのでやめました。

DNA PRODUCE #1「ニンニクノ心」

DNA PRODUCE
2006年7月28日〜30日 新宿シアターサンモール
作・演出:浅沼晋太郎
殺陣:奥住英明
出演:押野大地 猪狩敦子 浅沼晋太郎 水町斉子 蜂須賀智隆 武内由紀子 是近敦之 石塚義之アリtoキリギリス) 今日平 伊藤正巳 芹澤良 中村裕介 太田達也 笹岡幸司 望月祐浩 林田耕明 本山裕記 奥村友美 宇原智茂 川口愉己 河口舞華
30日昼公演を鑑賞。たわむれに観にいったお芝居だったけれど、これが大当たり。安土桃山時代の忍者たちを描いたアクション満載、脚本の上手さも光る面白さモジャー級の名芝居。ただしギャグはすべり気味。

物語がずっと「家の中」で繰り広げられるのにはびっくり。ひきこもりなのにアクションガンガン。舞台上はセットが大きな位置を占めており、役者が動ける範囲は結構狭い。なのにちっとも窮屈さを感じさせない大迫力にただただ圧倒。屋根によじ登ったり飛び跳ねたりと大忙しで、上手く緩急の取れたストーリー展開に、観客もまったく退屈せずにすみます。アクションはあるけどそれに頼って勢いだけでごまかさない、そんな心意気もしかと受け止めたぜよ。

タイトルの意味が明かされるところや、登場人物の名前に隠された意味が判明するシーンでは鳥肌が立った。伏線を伏線として認識させないで、油断しているところを一気に飛びつかれてびっくりさせられた感じ。そしてクライマックスの大立ち回り。悲しみを背負った忍、白砂役の押野大地さんが絶叫しながらの刀を振り回す壮絶な殺陣。泣きながら敵を斬りまくるその姿にやたらめったらグッときました。

そのほか見所は、浅沼晋太郎さんの目を瞑りながらの(盲目の役どころ)殺陣や、序盤のキャスト紹介も兼ねた群舞、布一枚で身を隠し次の瞬間には別の人間と入れ替わるイリュージョンなどなど盛りだくさん。アリtoキリギリスのキリギリスのほうもチョイ役どころかメインで出張っていました(台詞はかみまくりだったけど)。いやーお腹いっぱい。少年社中に続く好き劇団がまたひとつ増えました。

平山瑞穂「忘れないと誓ったぼくがいた」

なにかに夢中になっていた日々の痛々しさとか、日記を読み返すときの気恥ずかしさとか、青春っぽいもののすべてを奪われた男の子の物語。経験値を積まなければレベルアップできないという現代的感覚に基づけば主人公の人間的成長はありえないわけだが、そこをひっくり返してあざとく青春させちゃうあたりがさりげなくファンタジー(SF)。

それにしてもあれだな、つくづく人の恋愛なんてどうでもいいな。作者の文章が達者なせいか、読んでいてむかついたりはしなかったけど、のめりこめもしなかったのは、知らないやつの恋愛なんてどうでもよくて、読んでいる間ずっと心の底で彼らの破滅を望んでいる自分に気づいて自分が嫌になるからなんだよな。心狭いですからね。別に主人公とそんなに仲いいわけじゃないし、僕。